さて、今回のコレクション「Knitwear for Sailors and City Boys」にしかないポイントは、何度も言いますがこのグリーンなのです。
深く静かなだけでもなく、明るくポップなだけでもない。ほんのりブルーを感じて都会的な爽やかさもあれば、ほのかにイエローの印象が残りカントリーテイストもあるような。
この絶妙な色合いにどう辿り着いたのか、ブランドの代表でデザイナーのカトリーネ・ルングレン•アンデルセンさんへのインタビューをどうぞ。
Founder / Designer
Cathrine Lundgren Andersen
カトリーネ・ルングレン•アンデルセン|1966年、デンマーク生まれ。学生時代にファッションを学び、ニットデザイナーに。2009年、当時のパートナーであったPeter Kjær-Andersen(ピーター・キエル・アンデルセン1964-2018)と共に<ANDERSEN-ANDERSEN>を設立。
Interview for ANDERSEN-ANDERSEN
ー 最初にこのコラボの話が届いたとき、どう思いましたか?
カトリーネ・ルングレン•アンデルセン(以下、C)とても嬉しく思いました。POPEYEはファッション、カルチャー、ライフスタイルと、若い世代だけではなく、幅広い年代にとても影響があるマガジンだと聞いています。<ANDERSEN-ANDERSEN>も世代を超えて愛されるブランドを目指しているので、共通する点がありますね。
ー 2022年の初めに話が出てから制作には1年半以上をかけていますが、「ほうれん草のような」というオファーについては正直どんな印象でしたか。
C: 明確なテーマでいいと思いました。そのおかげで制作はかなりスムーズに進んだと思います。私達は新しい色を加える際は、それが定番になる可能性をふまえて、十分な時間をかけます。通常はイメージした色を見つけるのに、オープンマインドなスタンスで、コンセプトを見つけていきます。通常は多くのアイディアの中から、1つのテーマに辿り着くのがとても大変なのです。
ー カトリーネさんがまずイメージしたグリーンはどんな色合いですか?
C: ほうれん草より濃いグリーンです。グリーンは、自然のシンボルで、今もこれからもずっと私たちがケアしなければならないものだから、樹木に近い色合いということで考えていました。そして、そのインスピレーションソースは私たちの身近の、まさにこの街です。コペンハーゲンは街の中に公園が多く、日常生活の中で目にするグリーンが多いのです。また、樹木だけでなく、例えば、公共の場にあるベンチもグリーンです。それらは深い色合いのグリーンですね。日々の生活、道を歩く人たちの服装や雰囲気が普段の私のインスピレーション源なので、今回もそういう私の中で蓄積されたアイディアの中から発想していきました。
ー コラボが決まって、まず出してくださったプレゼンテーション・シートの完成度の高さに驚いたのをよく覚えています。「もうここまでイメージが固まっているのか!」と。そのシートにあった以下の言葉がすごくいいなと思ったんです。
Green is a mix of yellow and blue - the perfect combination of warm and cool. Green represents growth and future possibilities. It is the nature of our world and the comfort we seek. With these references in mind, we are pleased to present you with Popeye Green.
C: ブルーとイエローは寒色と暖色という異なるテーマの組み合わせからのグリーンは、成長と未来の可能性を表現し、大切にしなければならない自然を象徴しています。そういう意味でも、この色は新しいエフェクトがあると思います。そんな気持ちを込めて、POPEYE GREENをご紹介したいです。
ー イメージが早い段階でだいぶ見えて、そこから実際のサンプルが届くまでは「まだかまだか」と待ち焦がれていました。じっくり作っているのかなというように思っていましたが、新しい色を作り出す、というのは大変なのですね。
C: 私たちが新色にトライする際には、環境負荷への配慮を怠りません。自分たちなりの試行錯誤に加えて、「REACH」というEUの厳しいレギュレーションを考慮したチェック工程を行っています。何項目にもよる使用禁止薬品などのレギュレーションを設けているとても厳しいものになっていて、しかもそれがかなりの頻度で更新されるので、毎回その都度チェックしてそれに沿うようにしています。
ー カトリーネさんは、完成したこのグリーンの出来栄えにどのくらい満足していますか?どんなところが優れたポイントだと思いますか?
C: 前述したように具体的なイメージを早い段階で掴めたことで、よい結果になったと思います。そして、どんな肌の色にも似合うグリーンに仕上がったのも満足している点です。加えて、グリーンという色は鮮やかだから、ニットの編み地の高低(凹凸)で色の印象が異なることがわかりやすいのです。光のあたる具合によって、編み地が低い部分は緩やかな印象、網み地が高い部分はフレッシュでアクティブな印象、というように。この濃淡の印象の違いは、当ブランドのミドルゲージ・ニットに共通するのですが、ネイビーなどの濃い色ではわかりにくいのです。鮮やかなグリーンだからこそ、この色合いのちょっとしたニュアンスの違いがわかりやすいという発見もありました。当ブランドの定番コレクションカラーであるオレンジ、ネイビーブルー、オフホワイトなどにもマッチしますから、組み合わせて楽しんでいただければ嬉しいです。
ー 今回はブランドにおける大定番の3型限定になりますが、このビーニーの、デザインや素材における特徴や魅力って何でしょうか?どんなふうに着て欲しいですか?
C: 寒い日の必需品ですね。ネイビークルーネック同様、このビーニーも素材はパタゴニアとウルグアイ産の100%ピュア・ニューウールを使用し、高密度に紡績して耐久性を高め、ヨーロッパの最高環境基準を満たす反応染料を使って染色したオリジナルの強撚糸を使っています。私たちは「エクストラスパン」と呼んでいますが、この糸を5ゲージのフルカーディガンスティッチ(日本語で両畦編み)でタイトに編んでいるので、量感があり、保温性が高い。そして毛羽立ちが起きにくく、いつでもキレイな見た目を保つことができます。
コペンハーゲンでは多くの人が通年自転車に乗っていますが、常に風が強く吹く街のため、ビーニーは今や必須のアイテムとなりました。また運河に面している街なので冬でも水泳をする人が多いのですが、寒さから頭を守るためにビーニーを被ったまま泳ぐ人もよく見かけます。
シーンとしては、通勤、通学などの普段使いはいいですね。ですがもちろん、どのアイテムも着方のルールなんてありません。自由に着ていただきたいです。
ー どうもありがとうございました。ちなみにカトリーネさんはほうれん草は好きですか?
C: はい、大好きです。ほうれん草は我が家での食卓にもよく登場しますよ。ファーマーズマーケットなどでフレッシュなものが手に入った時は鮮度を活かしてそのままサラダにしますが、ガーリックを効かせて、セサミオイルでソテーしても美味しいですよね。豆腐と合わせた味噌汁も定番で作りますが、チリを少しだけトッピングするのが我が家のレシピです。
ー ユニークな味噌汁!試してみたいです。
---