POPEYE GREENは、
コペンハーゲンの街の自然とほうれん草の
ミックスカラーなのだ。
さて、前回から繰り返しになりますが、〈ANDERSEN-ANDERSEN〉とのコレクション「Knitwear for Sailors and City Boys」にしかないポイントは、このグリーンなのです。
深く静かなだけでもなく、明るくポップなだけでもない。ほんのりブルーを感じて都会的な爽やかさもあれば、ほのかにイエローの印象が残りカントリーテイストもあるような。
この絶妙な色合いにどう辿り着いたのか。前回の記事ではブランドの代表でデザイナーのカトリーネ・ルングレン•アンデルセンさんがインタビューでじっくり教えてくれましたが、今回もまた彼女がPOPEYEの取材を受けてくれました。新作の「Marine Polo」のこと、そしてこのコラボレーションについて考えていることなど、丁寧に語ってくれています。
Founder / Designer
Cathrine Lundgren Andersen
カトリーネ・ルングレン•アンデルセン|1966年、デンマーク生まれ。学生時代にファッションを学び、ニットデザイナーに。2009年、当時のパートナーであったPeter Kjær-Andersen(ピーター・キエル・アンデルセン1964-2018)と共に<ANDERSEN-ANDERSEN>を設立。
Interview for ANDERSEN-ANDERSEN
ーPOPEYE GREENのニットアイテムを作るコラボは、昨年に続いて2回目ですね。前回について、やってみてどんな印象でしたか?
カトリーネ・ルングレン・アンデルセン(以下、C):日本は長年多くのファンがいてくださり、建築やデザインをはじめ文化や価値観にデンマークとの共通点も多く、いつも深い繋がりを感じています。そんな日本の若い人たちに人気のPOPEYEとのコラボレーションできるのは、とてもうれしいことでした。
「ポパイが食べるほうれん草のようなグリーン」という明確なテーマに対して、さまざまな色合いを試すうちに、まさにこれだという色が見つかったのです。新鮮でありながら穏やかさもあるグリーンは、どんな人にも似合って、既存のコレクションにもよく馴染む。みんなこのカラーを本当に気に入ってくれました。POPEYE ONLINE STOREで先行販売されていたので、それを知った人々からコペンハーゲンではいつ発売になるのかと問い合わせが本当にたくさんあったんです。大好評で、すぐに追加発注をかけました(笑)
ー今回、新作として加わったロングスリーブのニットポロシャツは、どんな服ですか?
C:このポロは「マリン・ポロ」といって、2年前にコレクションに加わった最新のアイテムのひとつです。インドアはもちろん、ハイキングなどちょっとしたアウトドアまで、春先や秋口に着られる軽やかなデザインを目指して作りました。漁師が暗い船上で前後関係なく着られるようにという発想からシンメトリーなセーターが多い私たちのコレクションのなかで、前後がある数少ないデザインでもあります。
身頃はプレーンなシングルステッチ、襟はダブル・ピケ・ステッチ、袖口や裾はやや太めの糸でリブ編みになっています。1インチに12本の針が入った12ゲージのフラットニットマシン(平編み機)を使用し、ピュアウールのエクストラ・スパン糸を1本使用した薄手のニット。ちょっとマニアックな情報かもしれませんが、身頃から襟へと繋がる部分は、裁断せずに2つの編み目を1つに減らして編み込み繋いでいて、よくある連結ループにかけるだけのものとは違い、すごく手間暇がかかっています。
ー前回から続く3型と、この新作のニットポロの違いは?
C:前回のコラボ作、シグニチャーの「ネイビー・クルーネック」は海の上のワークウェアをテーマにしたずっしり頑丈な作り。こちらは6本の糸を撚り合わせて5ゲージで編んだものですが、「マリン・ポロ」は同じ糸を1本で編んだもので、よりエレガントだと思います。編み目が細かく表面がスムーズな分、POPEYE GREENの発色がよく生き生きとした感じに仕上がりました。
ー前回はコペンハーゲンでのローンチイベントが大盛況だったと聞きました。このイベントについてもどうだったか、教えてください!
C:私たちのお店は30年代に建てられたアルネ・ヤコブセンによる建物の2階に位置しているのですが、そのウィンドウやエントランスにPOPEYE GREENの”P”ロゴステッカーを貼り、POPEYEを知らない人たちも「この“P”って何?」というところから入って、日本発のユニークな雑誌を熱心に見入っていました。
グリーンをテーマに元『Noma』のシェフにグリーンのスイーツを作ってもらったり、グリーンのボトルに入ったデンマークビール「TUBORG」(ツボルグ)を振る舞って、ファッション誌のエディターから学生、建築家など、年齢も性別もさまざまな人が集まり、特別なひとときだったと思います。もともと私たちの顧客は18才から80才までという感じで、年齢も性別もスタイルもさまざま。まさにそれを象徴するようなイベントになり、集まった人たちの着こなしを見るのも刺激的でした。
ー今回もコペンハーゲンでモデル撮影をしてくれましたね。ミュージシャンを起用しているようですが、彼は誰ですか?
C:今回モデルを勤めてくれたBertram(ベアタム:Bertram Ask Plauborg Rasmussen)は4人組のボーイズバンドAPHACA(アパカ)のリードボーカルとベース担当。ライブやフェスに今とても忙しくしている人気のバンドで、コペンハーゲンの若者を体現するような存在だと思います。Bertramが自転車に乗ってスタジオに行く、という日常の一コマでPOPEYE GREENのポロを着てもらいました。実は彼は末娘Vega(ヴェガ)の同級生で、昔からよく知っているんです。2023年に発表された『S-tog』(Sトレインというコペンを走る鉄道)という曲があるのですが、メンバーたちが冬の森でAndersen-Andersenを着ているライブセッションがインスタに上がっているので、ぜひ聴いてみてください。
ー最後に、POPEYEの読者、日本のお客さんたちに、何かメッセージをください!このコラボレーションのアイテムをどう楽しんで、どんなスタイルを作ってほしいですか?
C:耐久性もあり普遍的なデザインなので、長く愛用してもらいたいですね。流行を追うのではなく、色や形で遊びながら自分を表現する着こなしをサポートしたいと思っています。自由なスタイリングを楽しみながらセーターの価値を感じてもらい、数は少なくても質の良いものを手に入れるという、より持続可能な世界への新しいムーブメントの一翼を担ってもらえたらうれしいです。