*色違いのブルーはこちら
まだまだ寒いけど、市松模様の京うちわはいかが?何気なくいつも扇いでいたけど、魂がこもっているものは扇ぎ心地もまるで違うのだ。
昨年の京都特集のときに知り合った、『蜂屋うちわ職店』の蜂屋佑季さんに作ってもらったのが、この京うちわだ。市松模様が『蜂屋うちわ職店』のシグネチャーで、かの桂離宮の松琴亭という茶室の襖の“青い市松模様”がモチーフというのは先の特集でも触れたけど、今回はその青とともに、新しく緑も仲間入りさせてもらった。わりと気軽にエメラルドグリーンの色にしてほしいと頼み、どちらの色も裏面の右下にPのロゴも入れていただき、そのPのサイズをもうちょい大きく? いやもっと控えめに、なんて相談しながら決めて、完成とあいなったのだが、もちろん、そんなに簡単にはこのうちわは作れない。
どれだけこの1枚を作るのに大変なのかを僕らも知っておこうと蜂屋さんに聞いてみると、こうだ。
---蜂屋うちわが出来上がるまで---
1.香川県の竹屋さんからうちわの骨となる竹を丸ごと買う。だいたい2mくらいに切ってもらって持ち帰るそうだが、竹は節間しか使えないので、節間でカットして使う。
2.節間で切った竹を2cmくらいの幅にカットし整え、厚さが2.5mmほどになるまでカンナで削っていき、うちわの骨のもととなる薄い板状のものをひたすら作る。うちわの需要は夏なので、冬場にこの作業を行う。ここでサボるとツケがのちのちまわってくる。
3.整えた竹を一晩水に漬け込み、1mmくらいの幅で切り込みを入れていく。竹なので、割り目を入れると繊維に沿ってキレイに縦に割れるのだが、この際に手で竹を揉みながら割っていく。これがかなりの重労働だそうだ。根元5cmくらいまで1mm幅で竹を割り終えたら、2.5mmあった厚さを1mmまで削っていく。ここは蜂屋さんも試行錯誤で、最初から薄くしてしまうとうまく竹が揉めないと言っていた。この竹の骨作りがうちわのクオリティに直結するとのことで、いい竹と出合えると割る作業の効率も上がるそうだ。
4.骨作りとは別軸で、裏面に使う和紙にシルクスクリーンでPのマークと『蜂屋うちわ職店』のロゴを入れる。表面の市松模様は、四角くかたどった型を使い、刷り込み刷毛で色を塗り込んでいく。
5.作った骨をもとに仮張りを行う。割いた竹に水で薄めた糊を付け、1本1本根本から剥がしながら
6.仮張りが終わったら裏張り。Pマークの入った裏面から糊を塗り、和紙を貼っていく。このときに仮張りしていたクラフト紙を湿らせて剥がす。
7.市松模様の表面を糊付けして貼る。
8.骨に沿って筋を入れていく念付けという作業を行う。念ベラを使って1本1本両面なぞって、骨に沿ったキレイな筋が浮き出るようにする。両面やるので計100回なぞる。これをやると見た目の美しさが全然違ってくる。和紙が伸びるのでうちわのしなやかさも出るそうだ。
9.柄を差す部分に紙を貼る元板付けを両面に行う。
10.糊が乾燥したら、うちわの形に成型する。タガネを使い、叩き付け抜くような感じで半面ずつ2回カット。
11.うちわの縁に4mmほどの和紙を巻いてへり取りを行う。
12.檜の木をカットし、サンドペーパーで滑らかにしていた持ち手を、糊をちょんと付けて差し込み完成。
うちわ作りは分業制で、以前は竹の骨作りをする職人さんもいたそうだが、蜂屋さんはひとりで全工程をこなしている。うちわ職人歴10年のうちの数年間は京うちわといえばの『阿以波』(創業は1689年)で学んだが、骨の幅も太さも、どこにも決まりのない数ミリ単位の肌感覚の世界で、失敗しては考え、うちわを作り続けている。
取材をしたときも思ったけど、こんなに大変な工程なのに、蜂屋さんがとにかく楽しそうに作っているのが印象的だった。そりゃ、完成したうちわもなんだかウキウキしているでしょ。今回の撮影中も、まわりのスタッフがうちわを扇いで、扇ぎ心地がまるで違う! って驚いていたけど、やっぱりいいものって苦労の末に出来上がるのだね。ほんと最近の電気代がバカみたいに高くてびっくりだが、『蜂屋うちわ職店』のうちわを準備しておいて、今年の夏は天然の上質な風で涼んでみてほしい。うちわで扇いだからって電気代は安くはならないけど。
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蜂屋うちわ職店
左京区の鹿ヶ谷の長屋に、2019年に創業した京うちわの店。店主で職人の蜂屋佑季さんが、全ての制作工程をひとりで行い手作りするうちわが並んでいる。職人歴は300年以上の歴史を持つ京うちわの名門『阿以波』での修業時代もあわせて10年以上。「いつ辞めてもいいってくらい気軽にやってきました(笑)」と言うけれど、用と美と楽しさがある、間違いなくここにしかないうちわを作っている。
京都府京都市左京区鹿ヶ谷法然院西町40
10:00〜17:00
土・日・祝営業
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